『DELICACY』のレビューが出ました。

Sep 4, 2018
 ロンドン在住のアートブックの評論家、Robin titchener 氏のサイトで『DELICACY』が紹介されました!これを機に海外の方にも『DELICACY』を知っていただけたら幸いです。
以下、紹介されたページの日本語訳です。
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写真集を見て言葉を失うということはめったにない。アーティストなら誰でも語りたいストーリー、言いたいことがあるのだ。直接的な語りの場合もあるし、より抽象的なアプローチを使う人もいる。

正田真弘の「Delicacy」は、この数ヶ月、この何年もの間、いや、今まで遭遇した写真集のなかで、もっとも異質なもののひとつだ。

開花する日本のセックス業界において、より多様に、ニッチになる市場についての批評として、正田は、多彩な男たちに参加を求めることで表現を試みる。

正田は(巨大な人口と多様性という)明らかな理由に基づいて東京を現場に選び、男たちに、性的に興奮する女性の下着を持ってくるように依頼した。新しく、未着用のものもあれば、パートナー(男性または女性)の持ち物もあった。

男たちはポートレートのために下着を頭にかぶることを求められ、それぞれのポートレートの反対側には、路上、都会、風俗街、室内といった街のランドスケープが置かれている。

正田はこれをやることで、常に変化する東京の特質、いいものも悪いものも含めてその開発と進化を見せながら、より多様化する住民の性的嗜好やフェティシズムと比較しようと試みる。

こうしたイメージを見た第一印象は、登場人物は悲しく孤独な男たちに違いないというものだった。都会の暮らしと往々にして切り離すことのできない孤独のリアリティに窒息しそうになる男たちだと想像した。

(文字通り)何百万人という人口に囲まれて暮らすことの孤独と、自分は普遍的に愛され、感謝され、都会が約束する24時間のパーティシーンに自動的に吸い込まれるというユートピア的幻想は、我々が読んだり作ったりするフィクションの中にしか存在しない。

けれど併記を読んでみると、多くの男たちの現実はそうではなかった。そのかわり、外向けには堅苦しく、セックスのサービスが違法である制御された社会という、興味深い二項対立が存在する。正田によると、住民のニッチで異質、具体的な欲望には実際、受け皿があるのだ。

この「具体性」の内容は、この本には書かれていない。実際、正田は、日本の男性の精神はデリケートであり、多くの男性たちが満足を求めて、より内側の世界に向かざるを得ないことを暗に示唆する。

2016年にM+W Co Ltdによって出版されたこの本は、パリッとした白いマットな紙に、グロッシーにコーティングされた美しいカラー写真を掲載している。ローランド・ケルツによる序文も含め、日本の出版業界のご多分に漏れず、最高級の方法で印刷されている。

正田は「Delicacy」で、文化や男性性、欲望というものの特質について大きな疑問を呈している。多くの反応を引き出すであろうし、一方で、最終的にはこうした疑問に答えない。しかしひとつ言えるのは、この本が確実に独特であるということだ。

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Robin titchener 氏のHPはこちらのリンクからご覧いただけます。

M+Wスタッフ